Parallels Desktopバージョン19からの新機能である、AppleシリコンMacの「IPSWファイルを使ったmacOS仮想環境作成」について解説します。
IPSWファイルとは何か、メリット・デメリット、具体的な仮想環境の作成方法について解説します。
このページの記事はあらかじめParallels Desktop 19以降がインストールされている前提です。
まだインストールしてない方は、まずは以下の記事をにトライアル版のインストールまでを行なってください。
そもそもIPSWファイルとは何か?
IPSWとは、iOSやmacOSのOSリカバリイメージを含んだファイル形式です。
本来はiPhone用のソフトウエアということで、IPSW=iPhone SoftWareの略です。
大まかなイメージとしては、macOSのインストール用のISOファイルに近いと思ってOKです。
MacのFinderdeでは、IPSWファイルは次のアイコンで表示されます。
IPSWファイルは、主に次のような用途で使われています。
- iPhoneの一般ユーザがiOSのアップデートを行う時にダウンロードして使用
- iPhoneやMacのアプリ開発者などが正式なOSリリース前にテストを行う時に使用
- iPhoneやMacが起動できなくなった時の復旧に使用(工場出荷時の状態に戻す)
Parallels Desktop 19以降のAppleシリコンMacでは、このIPSWファイルを使ってmacOSの仮想環境を作成する機能が追加されました。
IPSWを使ったmacOS仮想環境作成のメリット・デメリット
- ホストOS(Mac本体)のmacOSと異なるバージョンのゲストOS(仮想環境)が作成できる
Parallels Desktopで、従来からある「アプリ内インストール」と比較した表が以下のとおりです。
例えば、ホストOS(Mac本体)が14 Sonomaの場合は、以下のようになります。
ホストOS (Mac本体) | ゲストOS (仮想環境) | ||
---|---|---|---|
IPSWインストール | ・14 Sonoma | いずれもインストール可能 ・14 Sonoma ・13 Ventura ・12 Monterey | |
アプリ内インストール | ・14 Sonoma | ホストOSと同じものしか、 インストール不可 ・14 Sonoma |
参考までに、以下の図は「アプリ内インストール」の時の操作画面です。
- ISPWファイルは本来は開発者向けなので、Parallels Desktopで使う場合にどこまでParallels社やApple社のサポートが受けられるかが疑問
上記のデメリットがあるので、どうしてもmacOSがホストOSとゲストOSで異なる必要がある場合以外は、「アプリ内インストール」でバージョンを合わせて使うことをオススメします。
仮想マシンのmacOSの制限事項
Parallels Desktop 19で検証したところ、以下の比較表のような仮想マシンのmacOSバージョンの制限事項が確認できました。
仮想マシンを作成するときの参考にしてください。
セル背景が水色で「○」の部分は、使用OKです。
セル背景が赤色で「-」の部分は、使用NGです。
機能 | 14.x Sonoma | 13.x Ventura | 12.x Monterey |
---|---|---|---|
Mac本体とマイフォルダ共有 | ○ | ○ | – |
Mac本体とクリップボード共有 | ○ | ○ | ○ |
ウインドゥ枠をドラッグして、ディスプレイ解像度変更 | ○ | – | – |
仮想マシンのサスペンド | ○ | ○ | ○ |
なお、ホストOSがmacOSの場合のサスペンドは、以下の図のようにメニューバーの「Action」->「Suspend」を行う必要があります。
Windowsの場合は、仮想マシンの左上の赤いボタンをクリックでサスペンドできるので、そこの違いに注意が必要です。
バージョン19.2.0では、ホストOSがmacOS・Windowsともに、仮想マシンの左上の赤いボタンをクリックでサスペンドできるようになりました。(2023/12/14 追記)
ISPWファイルのダウンロード
IPSWファイルをダウンロードする方法はいくつかあるのですが、ここでは最も操作が簡単な方法、無料アプリ「Mist」を使った方法を紹介します。
なお、アプリ「Mist」はmacOS Monterey 12.0以上が稼働しているMacで使用可能です。
(Parallels Desktop 19は、MacOS Monterey 12.6以上が稼働しているMacで使用可能なので、Parallels Desktop 19がインストールされたMacでは、Mistの条件は満たしているとは思いますが。)
アプリ「Mist」で、macOSのインストールで一般的に使われるISO/DMG/APP形式のダウンロードや、ブート可能なUSBメモリ作成については、以下の記事で記載しています。
▶︎ 以下のリンク先をクリックして、公式サイトのリリースページを開きます。
▶︎ 公式サイトが開いたら、「Latest(最新)」のラベルがついたバージョン番号の見出しの中の、以下のいずれかのファイルをクリックして、ファイルを保存します。
- dmgファイル
- pkgファイル
以下の画面では、見出し「0.8.1」の中の、「Mist.0.8.1.dmg」または「Mist.0.8.1.pkg」と書かれたファイルになります。
どちらでも同じアプリですが、インストール方法が異なります。
dmgファイルの方はドラッグ&ドロップでインストール、pkgファイルの方はダブルクリックでインストーラが実行されます。
お好みに応じて選んで構いませんが、よくわからなければ操作が簡単なdmgの方をオススメします。
以下の図は、矢印のあたりの拡大図です。
▶︎ dmgファイルをダウンロードしたら、ダブルクリックされて表示されたアプリを、フォルダ「アプリケーション」へドラッグ&ドロップしてインストールします。
▶︎ アプリ「Mist」をインストールしたら、ダブルクリックして起動します。
▶︎ アプリ「Mist」が起動したら、ポップアップ画面「Refreshing」が表示されて、最新のmacOSバージョンを取得するので、しばらく待ちます。
▶︎ 最新の情報が取得できたら、自動的にポップアップ画面「Refreshing」が閉じられます。
この画面になったら、画面上部のタブ「Firmwares」をクリックします。
▶︎ 画面が「Firmwares」に切り替わったら、IPSWファイルをダウンロードしたいバージョンの右にある緑色のダウンロードボタンをクリックします。
以下の図では、サンプルとして「12.0.1」をクリックしてみます。
▶︎ 図のようにタイトル「Privileged Helper Tool not installed!(特権ヘルパーツールがインストールされていません!)」と表示されたら、必要なツールをインストールするために、ボタン「Install…」をクリックします。
▶︎ 特権ヘルパーツールをインストールした直後は画面が何も変わらないことがありますが、その場合はもう一度IPSWファイルをダウンロードします。
▶︎ 図のようにファイル保存の操作画面が表示されたら、適当なダウンロード場所を指定してから、ボタン「Save」をクリックします。
▶︎ IPSWファイルのダウンロード中には図のような進捗状況が表示されるので、完了するまでしばらく待ちます。
なお、アプリ「Mist」を終了させなければ、別のアプリで作業を行なっていても問題ありません。
▶︎ ダウンロードが完了したら、Macの画面に通知が表示されたりアラーム音が鳴ると思いますが、アプリ「Mist」の右下のボタン「Close」をクリックして閉じます。
▶︎ Finderでダウンロード先のフォルダを開いて、IPSWファイルがダウンロードされていることを確認します。
確認できたら、アプリ「Mist」は終了させてもOKです。
この後、仮想環境の作成の説明になりますが、Finderの画面はそのままにして、次の章に進んでください。(IPSWファイルをドラッグ&ドロップで操作するため)
Parallels Desktopで仮想環境の作成
IPSWファイルを使ったmacOS仮想環境の作り方は、最初にIPSWファイルを指定するだけで、基本的にはデフォルトのアプリ内インストールと変わりありません。
以下、IPSWを使った手順です。
▶︎ Parallels Desktopを起動します。
▶︎ Parallels Desktopが起動したら、「コントロールセンター」の右上のボタン+をクリックして、新しく仮想マシンを作成します。
新しく仮想マシンを作る方法は、他にもメニューバーの「ファイル」->「新規」を選択する方法もあります。
▶︎ 図のように画面「新規作成」が表示されたら、画面上部の「イメージファイルからインストールからインストールします」をクリックしてから、右下のボタン「続行」をクリックします。
▶︎ 図のようにイメージファイルの選択画面が表示されたら、ボタン「手動で選択する」をクリックします。
▶︎ 画面が切り替わったら、あらかじめ表示しておいたFinderのIPSWファイルを、画面「新規作成」の中にドラッグ&ドロップします。
▶︎ 図のように、画面中央に「macOS」と表示されている場合はOSの種類を正しく認識されているので、これを確認してから右下のボタン「続行」をクリックします。
▶︎ 図のように「名前と場所」と表示されたら、好みに応じて設定を変更してから、右下のボタン「作成」をクリックします。
▶︎ 図のように背景が黒い画面になったら仮想環境作成の処理が始まるので、操作が必要な画面になるまで待機します。
▶︎ 図のように、プロセス中は画面に全く何も表示されない時が数十秒〜数分間続く場合もありますが、しばらく待ちます。
▶︎ 図のように、macOSセットアップの初期画面が表示されたら、画面に従って設定を行なってください。
この後は、通常のmacOSのセットアップと同じなので、説明は省略します。
▶︎ うまくIPSWファイルからmacOSがインストールできました。
▶︎ Finderのサイドバーを見ると、アプリ「Parallels Tools」のディスクイメージがマウントされているはずなので、これをインストールしてやります。
インストールしたら、macOSの仮想環境を再起動します。
▶︎ 再起動できたら、仮想環境の作成は完了です。
まとめ
Parallels Desktopバージョン19からの新機能である「IPSWファイルを使ったmacOS仮想環境作成」について解説しました。
当サイトでは、カテゴリ【Parallels Desktop】の関連記事を多数公開していますので、ご覧ください。
以下は、人気のある記事ランキングです。
当ページの更新履歴
- 2023/12/14
- ホストmacOSのサスペンドも、Windows同様にウインドウの赤ボタンクリックで可能になりました。
- 2023/12/8
- 最初の公開
コメント